【USA360】ってご存じでしたか?私は最近になって知ったのですが、設定は2019年と歴史の浅い投資信託のようです。
最近どうもレバナス(NASDAQ100 2倍レバレッジファンド)と並んで耳にすることが多い投資信託です。
個人的にはレバレッジ系の商品は長期投資は向かないとは思っていますが、メンタル強めの方はには適しているという結論にまとまりました👇
なぜ、レバナスと並んで良く耳にするようになったのか今回は検証です!
【USA360】の概要を簡単にお示しします👇
- 運用会社
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楽天投資顧問
- 設定日
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2019/11/25
- 決算日
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8/25(年1回)
- 信託報酬
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0.4675%(実質負担費用:0.4975%)
- 購入手数料
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ノーロード(ただし、対人取引時3.3%)
- NISA・積み立てNISA
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NISAは対応、積み立てNISAは非対応
- 償還期限
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無期限
- リターン
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1年リターンは29.78%
リターンは申し分ないですね。
注意点は積み立てNISAには対応していないことでしょうか。積み立てにNISAはこういうトリッキーな商品には対応しないことが多いですね。
信託報酬は0.4675%、高くもなく安くもなく、いや、高いか?といったところ。レバナスなどに比べれば安いですが・・・。
個人的には償還が無期限というところは好印象です。償還期日が決まっているものには手を出しにくい。
では、つづいて【USA360】がどういう商品かを見ていきたいと思います!
【USA360】ってどんな商品?
気になるのは『360』の部分。投資対象は米国でしょうが、この『360』って何ですかね?
答えは、債券にレバレッジをかけることみたいです!
ます、純資産のうち90%を米国株式に投資。残り10%にレバレッジを27倍かけて270%債券(先物)に投資をする、というもののようです。
楽天投資顧問さんの説明が一番わかりやすかったです👇
にしても債券に27倍レバレッジとは・・・。
ちなみに、レバレッジをかけるのは債券のみで株式には一切レバレッジをかけず現物運用のようです。
また、米国株式はバンガード社のVTI(全米株式 上場投資信託)を、債券には米国5年国債先物と10年国債先物を半々で構成しています。
あまり値動きが大きくない債券だからこそレバレッジってことなんですかね?
運用成績が気になるところです・・・。
運用成績
まだ設定されて日が浅いため、リターンは1年リターンのみしか公表されていませんが、そのリターンは29.78%。
同期間のVTIの上昇が21%程度であったことを考えると、十分にアウトパフォームしています。楽天投資顧問さんでは、USA360でバックテストを行った場合の成績を示していました👇
や、やばいですね!
積み立て期間30年でなんと30倍だそうです。
こりゃすごい!
が、レバレッジをかけている以上気になるのが、ドローダウン。
レバレッジ系投資信託やETFは暴落時のドローダウンが半端ないことは自明です。【USA360】もレバレッジをかけている以上マーケットが暴落時のドローダウンは覚悟しなくてはいけないのでしょうか?
こちらはコロナショック時のデータのようです👇
赤点線で囲んだところがコロナショック時です。赤線が【USA360】ですので、米国株式よりもドローダウンが小さいことがわかります。
また、コロナショック前の基準に戻るのも米国株式に比べて2か月ほど早い印象です。
リターンも良く、ドローダウンも小さい。
緑点線が米国国債価格ですが、コロナショック時に上昇しています。これがクッションとなってUSA360のドローダウンが小さくなったようです。
非常に魅力的な商品に思えますが、この商品を理解するには債券について理解する必要がありそうです。債券と株式の関係、債券のリスクなどをしっかり理解していきましょう!
債券とは
債券の基本
債券はお金を借りた側が発行する証書のようなものです。国が発行すれば『国債』、会社が発行すれば『社債』というわけです。
お金を貸す側は、もちろんタダで貸すわけにはいきません。貸した側は見返りとして『利子』を受け取ることができます。これが債券投資の超基本部分です。
債券には必ず『満期』があります。5年であったり、10年であったり。
その満期を迎えると元本が返金されるので、貸した側は利子分が儲けになるというわけです。
また、債券には下記の3つの価格があります👇
- 額面金額:将来返してもらえるお金
- 発行価格:発行時の価格
- 債券価格:他の株式などと同じで現在の取引値
まず額面金額ですが、これは債券取引における最小単位です。また将来満期を迎えた際に返金してもらえるお金でもあります。額面金額が100円であれば満期時に100円が返金されます。
続いて発行価格です。これは債券を発行する(購入する)際の価格なんですが、額面金額と異なっていることがあります。例えば額面金額100円あたり発行価格が101円だとすると、『満期時に100円返してもらえる債券を101円で購入する』ということになります。
最後に債券価格です。債券はあくまでお金を貸したよという証書というか有価証券ですので、他の株式同様に満期を迎える前に売買することが可能です。債券価格とはこの取引値となります。購入者が増えれば価格は上がり、購入者が減れば価格は下がります。
このように債券とは満期を迎えれば額面金額が返金される安定性と、自由に売買できる流動性に優れた商品と言えるでしょう。
利率と利回りの違い
債券には利率と利回りがあります。
利率とは額面金額に対する利子の割合で、これは満期を迎えるまでずっと一定です。利率が一定なので利子も当然一定になります。
一方で利回りとは利子による収益と償還(売却)差損益を合計したものの投資金額に対する割合です。SBI証券さんのHPにわかりやすい図があったので借用しました👇
利率は誰がいついくらで買っても同じなのに対し、利回りは買うタイミングで全くことなってくるということがわかるかと思います。
では、債券価格はどのように変動するのでしょうか?
債券価格の変動要因
債券価格は一般的に以下の4つの要因で変動すると言われています👇
- 金利
- 為替
- 景気
- 物価
債券価格と金利の関係
まずは1つ目の要因が金利です。債券価格は基本的に金利と相反する動きをします。つまり金利が上がれば債券価格は下落し、金利が下がれば債券価格は上昇するということです。
これは何故かというと、仮に現在所有している債券の利率が1%で市場金利が2%だとします。そうなると、所持している債券の利率の魅力が薄まり、結果としてその債券の人気がなくなり債券価格は下落します。
一方で市場金利が0.5%となると、所持している利率1%の債券は市場金利に対しての優位性が増し、結果人気が高まり債券価格が上昇します。
このように、債券価格と金利は切っても切れない関係にあります。
債券価格と為替の関係
2つ目の要因は為替です。基本的に通貨高は債券価格の上昇に関与します。理由は2つ。
1つは為替差益のために多くの投資家が通貨高の国の国債を買うからです。多くの資金が国債に流入するため債券価格は押し上げられます。
2つ目は日本場合、円高になることで輸入物価が下がります。多くの物を輸入している日本では輸入物価の下落が国内の物価の下落を誘引し、結果金利低下につながります。金利が低下すると債券価格は上昇するんでしたよね。
結果として通貨高は債券価格を上昇させます。
債券価格と景気の関係
結果を先に言うと、景気が上向くと金利が上がり、債券価格は下落。景気が下向くと金利が下がり債券価格は上昇します。
景気と金利のサイクルには一定の動きがあるようで、
景気回復→金利上昇→景気後退→金利低下
というサイクルをたどります。
景気が回復してくると、設備投資などの資金需要が高まりお金を必要とする人たちが増えることで金利が上昇します。
一方で景気が後退してくると、設備投資などの資金需要が減りお金を借りたい人が減ってしまうため、金利を下げることでお金を市場に増やそうとします。
このように景気は金利と密に連動しており、結果として債券価格とも密接に関連しています。
債券価格と物価の関係
為替のとの関係性でも書きましたが、物価が上昇すると金利も上昇します。結果として債券価格は下落しますね。つまり物価と債券価格は反比例します。
債券にレバレッジをかける意味
以上より債券価格が上昇するには、金利低下・通貨高・景気低下・物価低下の要素が必要だということです。
では債券にレバレッジをかける意味は何でしょうか?
※先物を利用したレバレッジの仕組みがわからない方は下記記事を参照してください👇
USA360の商品内容としては、株式:債券=1:3の比率で分散させています。で、これは全米株式を90%、債券に10%振り分けた上で、債券に27倍レバレッジを効かせている計算になります。
100万円を投資するのであれば、90万円を全米株式に、10万円を米国債券に振り分けますが、実際にはここにレバレッジを効かせて270万円分米国債券先物取引をする計算になります。
ここで米国債券の価格推移をお見せします👇
このETFは米国国債7-10年物のETFです。設定は2002年ですが、設定来のリターンは39%程度です。
20年近く投資をしても39%程度のリターンでは少々物足りないですね。しかし、特筆すべき点が債券投資にはあります。それがこちらです👇
上のグラフは同じくIEFの価格推移ですが、ある一部を切り出しました。これはコロナショック時の価格推移です。軒並み下落する株式をよそにIEFはむしろ価格を上昇させています。
つまり、債券投資への分散はこういうショック時に効果を最大限発揮するということです。
ただし、レバレッジをかけずに株式:債券=1:3をしようと思うと、100万円投資をすると株式は25万円分のみしか保有できません。リターンの多くを生むであろう株式の保有割合が低いと当然低リターンになります。かといって比率を1:1にするとショック時の下落耐性が弱く分散効果が低い。
この結果債券にレバレッジを効かせるという結論に至ったのだと思います。
結構分散型のレバレッジ商品は存在しているので、こういうアセットアロケーションの方法は有効なんだと思います。ただ、USA360のように債券に27倍のレバレッジをかけることが正解かどうかはわかりません。
27倍と聞くとかけすぎではないかという懸念も当然ですが沸いてきますね・・・。
が、バックテストの結果ではかなりの高リターンをたたき出しているのは事実です。
債券への分散投資の弱点
最適なアセットアロケーションであろう債券レバレッジですが、弱点はないのでしょか?
ここでおさらいですが、債券価格は金利が上昇すると下がり、金利が下落すると上昇するのでした。
ということは、好景気時は金利も上がり債券価格は下落し、不景気時は金利が下がり債券価格は上昇します。ただ、好景気時は同時に所持している株式がリターンを多く稼いでくれます。一方で、不景気時は株式は下がるけれども、債券価格が上昇しそれをカバーします。
USA360のコロナショック時の価格推移を見てみると、株式の向く方向に価格は推移しますが、債券に分散しているおかげで下落率は低く、元に戻るまでの期間も短くすんでいます。
いいことしかないような分散ですが、ここで株式は下がり、債券価格も下がるような状況はないのでしょうか?
つまり、『金利は上がるのに不景気』という状況です。
金利が上がるのに不景気、これを一般的にスタグフレーションと呼んでいます。簡単に言えば供給不足型の不況です。
普通の不況は景気が悪くなり、賃金等も下がり需要が低下し金利も下がります。この場合は債券レバレッジの分散は有効だと思われます。
が、スタグフレーションのような供給不足型の不況では、物が足りないために物価が上がる。生産活動ができないためこの物価上昇に対する賃金の増加は見込めない。
相対的に生活水準は低下してしまいそうですね。
この時はというと、不況のためもちろん株式は下落します。しかし、金利の上昇のため債券も下落します。つまり2重で価格が下落するために、この場合は分散効果がありません。
これが弱点といえるでしょうか?
日本ではちょうどオイルショックがこれにあたると言います。そして米国ではこれからスタグフレーションになると懸念されています。
本当にそうなるかどうかはわかりませんが、なったときはおそらくUSA360を含む債券分散をさせている商品のリターンは低迷することが予想されます。
USA360の最適な投資タイミング
これは他の投資先と同様に、わからないが正解でしょう。わからないからこそ積み立てなどでコツコツやっていくのがベストだと思います。
先にも述べましたが、USA360の最大の懸念事項は『金利が上がり、不況になる』スタグフレーションだと思います。
スタグフレーションの歴史は日本では『1970年のオイルショック』が該当するようです。
また、世界のどこかで戦争が起こり、設備投資費などが軍事品に回り、生活品への締め付けが起こることによって供給不足になってもスタグフレーションは発生するそうです。
日本では戦争はないかもしれませんが、USA360の投資先は米国です。米国は常時軍事介入をしています。直近ではイラクやシリアへの介入が記憶に新しいでしょうか?
米国が当事者ではないため、供給不足などには陥っていませんが、今後はわかりませんね。
ですので、やはりコツコツ積み立てていくのがベストです。
隠れコスト
USA360は運用からすでに2年以上経っているので、コストが確定しています。信託報酬は0.4975%でしたが、この他にも実際にはコストがかかります。
信託報酬は目論見書などにしっかり記載されていますが、この隠れコストは読んで字のごとく目論見書ではわかりません。
1年間運用をしての運用報告書が必要です。
投資信託のコストについての説明は下記記事を参照してください👇
では実際のUSA360のコストを確認してみましょう👇
これはUSA360の年間の運用報告書です。運用開始後1年以上経過しているものはこのように年間運用報告書があると思うので、まず確認することをお勧めします。
で、これは経費の報告書ですが、1万口あたりの経費です。USA360は実際には0.69%と明示されていた信託報酬0.4975%よりも0.2%ほど高かったようですね。
この隠れコストには売買委託手数料や保管費、監査費、印刷費などが上乗せされています。現在の流れで印刷費って削れないのですかね?
まぁ店頭販売で購入した層には運用報告書を紙で送付しているのでやむを得ないのだとは思いますが、ここは削って欲しい!
0.69%はまぁまぁ高い部類の手数料ですね。長期運用だと手数料の0.2%もバカにできませんので、ぜひ経費削減をお願いしたいところ。
まとめ
今回は米国債券に27倍と高レバレッジをかけた商品『楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(愛称:USA360)』を見てきました。
リターンのバックテストでは30年間で30倍と驚異的なリターンでした。
ただ、未来を約束するものではありませんのであしからず。スタグフレーションが来なければ、この先も良い成果を残せる投資先なのかなと個人的には思っています。
まぁ来たとしても狼狽しないように、コツコツ積み立てていけばよいのかなと思います。
信託報酬は0.4975%(実質費用負担)でしたが、隠れコストが乗り0.69%が本来の経費です。インデックス型の投資信託に比べると高い部類に入りますが、こういうバランス型の商品は管理なども複雑になってくるので。経費が高くつくのは仕方がないことかなと思います。
個人的にはコア資産にはなり得ませんが、サテライトとしては十分機能しそうだと思います。コロナショック時のドローダウンも優秀でした。これがレバナスと共に良く耳にするようになった原因でしょうか?
レバナスの精神崩壊しそうなくらいのドローダウンをUSA360で緩衝すような?
ただ、レバナス以外のインデックスとの組み合わせでも緩衝としては機能しそうですね。USA360の場合、株式の対象が全米株式なので、コア資産には全世界株式(オールカントリーなど)とかにしてみるといったアレンジもできそうです!
私は現在毎月1万円程度ですが積み立てしています。全体の運用額からした少額ですが、今後も続けていき運用結果を報告したいと思います。
以上、【レバナスと対をなす!?】30年で30倍!楽天・米国レバレッジバランスファンド(愛称:USA360)の実力!
でした!良い投資ライフを!
※月並みですが、投資は自己責任でお願いいたします。